SaaSの解約率(チャーン)を下げる方法:解約理由の調べ方と改善策
解約率を下げるには、まず正しく計測し、お客様が解約する理由を、本人の言葉と利用データの両方から突き止めます。そして最も大きな原因を改善します。多くの若いSaaSプロダクトでは、大きな効果が出やすいのは次の3つです。新しいお客様を早く本当の成果に到達させること(オンボーディング)、決済の失敗を取り戻すこと(非自発的チャーン)、そして解約する前に利用をやめてしまったお客様に気づくことです。解約手続きでの割引は多少効果がありますが、理由そのものを解決するほうがはるかに効果的です。
以下の数字はすべて架空の例であり、業界の基準値ではありません。
改善する前に解約率を正しく計測する
何を変えるのかを把握しておきましょう。毎月、次を追跡します。
- 顧客の解約率:解約したお客様の数 ÷ 月初のお客様の数
- 売上ベースの解約率:解約やダウングレードで失われたMRR ÷ 月初のMRR
- 自発的か非自発的か:解約を申し出たのか、それとも決済が失敗したのか
- いつ離れるか:最初の1か月目、数か月後、年額の更新時のどれか
計算式と注意点はSaaSの指標を解説にまとめています。
例: 月初に200人のお客様がいて、12人が解約した場合、顧客の解約率は6%です。12人のうち、4人は決済の失敗を回収できなかった人で、5人は最初の60日以内に解約した人でした。この内訳だけで、どこを重点的に見るべきかが分かります。
解約の理由を調べる
解約フローで聞く
解約する人に、「解約する主な理由は何ですか?」と1つだけ質問します。選択肢と自由記述欄を用意しましょう。
- 高すぎる
- 必要な機能がない
- 使いにくい、または設定する時間がない
- 別のツールに乗り換えた
- 短期のプロジェクトにしか必要なかった
- その他
回答は任意にし、1画面に収めてください。自由記述の回答はすべて読みましょう。選んだカテゴリーよりも、お客様が使う言葉のほうが多くの情報を含んでいます。
解約した人に直接話を聞く
最近解約したお客様に、実在の担当者から個人的にメールを送り、15分ほど時間をいただけないか頼みましょう。返信してくれる人は多くありませんが、返信がある人の話は価値があります。顧客インタビューの方法と同じく、「どうしてほしいか」ではなく「何が起きたか」を聞いてください。
利用データを見る
解約したお客様が、離れる前に何をしていたかを確認します。
- 本来の価値を感じられる最初の成果に到達したことがあるか?
- 最後にログインしたのはいつか?
- 一度も使われなかった機能は何か?
- 誰かを招待したことがあるか?
残っているお客様と比べてみましょう。その差が問題の所在を示すことがよくあります。たとえば、データソースを接続しなかったお客様はほぼ全員が解約している、といったケースです。
最大の原因を改善する
1. 初期の解約:オンボーディング
数週間以内に解約するお客様は、たいてい価値を実感できていません。よくある改善策は次のとおりです。
- 最初の成果を定義する。 継続につながる行動、たとえば最初の請求書の送付、最初のページの公開、最初のチームメンバーの招待などを決めます。
- その前のステップを減らす。 登録から、その成果までの間にあるフォームの項目やセットアップ画面は、お客様を失う原因になります。
- テンプレートやサンプルデータを使う。 初日からプロダクトが空っぽに見えないようにします。
- 短い案内メールを送る。 お客様の行動(または未行動)に応じて、次にやるべきことを案内するメールを自動で送ります。
- 高額プランには、セットアップの電話を提供する。
詳しくは新規ユーザーのオンボーディング方法をご覧ください。
2. 非自発的チャーン:決済の失敗
カードの期限切れ、再発行、利用上限への到達などが原因です。こうしたお客様は、解約を自ら選んだわけではありません。確認すべき項目は次のとおりです。
- 決済プロバイダーで自動の再試行を有効にする。
- 督促メールを送る。決済が失敗したことを丁寧に伝え、支払い情報を更新できるリンクを添えます。
- カードの期限切れの前にメールを送る。
- 請求の対応が必要なときは、アプリ内でバナーを表示する。
- アクセスを止める前に、短い猶予期間を設ける。
- 決済プロバイダーが対応していれば、複数の支払い方法を受け付ける。
StripeやPaddleなどには、再試行や通知の設定があらかじめ用意されています。まず、ご利用の決済プロバイダーで何ができるかを確認しましょう。自分のStripeアカウントで課金している場合は、アプリに決済を追加する方法で、決済失敗をアプリが把握する仕組みであるWebhookを解説しています。
3. 静かな解約:利用をやめたお客様
有料のお客様でも、数週間ログインしていなければ、次の請求のタイミングで解約する可能性が高いです。「リスクがある」状態を定義し(たとえば14日間まったく利用がない場合)、対応しましょう。
- まだ試していない機能について、役立つ案内を送る。
- 大口のお客様には、個別に連絡する。
- 前回の訪問以降に変わったことを表示する。
4.「高すぎる」
この回答は、「払えない」ではなく「自分にとって価値に見合わない」という意味であることが多いです。対策の例は次のとおりです。
- 機能を絞った安価なプランを用意し、価格に敏感なお客様が解約せずにダウングレードできるようにする。
- 年額払いで割引する。
- 季節性のあるビジネス向けに、一時停止のオプションを用意する。
- オンボーディングを改善し、払っている価格に見合う価値をすぐに得てもらう。
価格に関する声が続く場合は、SaaSの価格設定の方法をご覧ください。
5.「必要な機能がない」
具体的な機能を記録し、どのくらいの頻度で出てくるかを数えましょう。引き留めたいお客様から同じ機能の要望が繰り返し出ているなら、開発する強い根拠になります。要望がばらばらなら、プロダクトが対象とするお客様とずれている可能性があります。その場合は、プロダクトではなくマーケティングを見直してください。
6.「プロジェクトのためにしか必要なかった」
一時的な利用による解約は、ある程度自然なものです。ご提供しているものが単発の課題を解決するものなら、サブスクリプションは合わないかもしれません。買い切り型の価格設定や一時停止のオプションを検討しましょう。このグループは別に集計し、改善可能な解約が見えなくならないようにしてください。
役立つ解約フローを作る
良い解約フローは、短く、誠実で、かんたんに完了できるものです。
- 理由を聞く(質問は1つだけ)。
- 回答に応じた代替案を1つ提示する。「今だけ必要」なら一時停止、「高すぎる」ならダウングレード、「使いにくい」ならヘルプ記事や電話相談への案内を出します。
- 解約の確定を明確に伝える。アクセスがいつ終わるかも含めます。
- 確認メールを送り、またいつでも戻ってこられるようにしておく。
解約ボタンを隠したり、電話を必須にしたり、次々と条件を提示して引き留めたりしてはいけません。お客様の不満を招き、チャージバックや悪い評価につながり、地域によってはサブスクリプションの消費者保護ルールに違反します。販売している地域のルールを確認してください。
効果が積み重なる継続のための習慣
- 解約したときだけでなく、定期的にお客様と話す。
- 変更履歴ページを公開し、プロダクトが改善されていることをお客様に見てもらう。詳しくは変更履歴ページの作り方をご覧ください。
- サポートには素早く回答する。 回答が遅いと、小さな問題が解約につながります。
- 価値を感じているお客様には、年額プランを勧める。
- チームでの利用を促す。 複数の人が使うプロダクトは、1人だけが使うものよりも手放しにくい傾向があります。
- 解約理由を毎月見直し、取り組む項目を1つ選ぶ。
シンプルな解約率改善計画
| 週 | 施策 |
|---|---|
| 1 | 解約の計測を設定する:自発的か非自発的か、お客様の期間別に分ける |
| 1 | 決済の再試行と、決済失敗時のメールを有効にする |
| 2 | 解約時の1問アンケートを追加する |
| 2〜3 | 最近の解約者10人に、短い電話を依頼するメールを送る |
| 3〜4 | 活性化の行動を定義し、それに到達した人を計測する |
| 4以降 | 見つけた最大の原因を改善し、翌月にもう一度計測する |
自分のアプリで実装する
これらの施策の多くは、小さな機能として実装できます。たとえば、データベースに保存する解約アンケート、管理画面の「リスクあり」一覧、非アクティブや決済失敗のWebhookをきっかけに送るメールなどです。Mythexで作ったアプリなら、「理由を聞き、一時停止を提案し、回答を保存する解約フローを追加して」のように、チャットで自然言語で頼めます。メールは、ご自身のメール配信サービスを通じて送られます。配線の方法はメール送信のレシピをご覧ください。
よくある質問
解約率を最も早く下げる方法は何ですか?
まず意図しない解約(非自発的チャーン)から改善しましょう。決済に失敗したら再試行し、カードの期限が切れる前にメールで知らせ、支払い情報をかんたんに更新できるようにします。こうしたお客様は自分の意思で解約したわけではないため、プロダクトを変えるよりも取り戻すほうが早いことが多いです。
お客様が解約する理由はどうやって調べればよいですか?
解約手続きの中で、短い任意の質問を1つだけ入れ、回答をすべて読みましょう。また、解約した人の一部には個別にフォローアップします。あわせて、最後にログインした日や使った機能などの利用データも確認してください。
年額プランは解約率を下げますか?
年額プランは、お客様が解約の機会を持つ回数を減らします。年額を選ぶお客様は、もともと継続する意思が強いことも多いです。ただし、解約の根本的な理由を解決するわけではないため、年が終わって更新するタイミングの継続率も確認しましょう。
解約しにくくするべきですか?
いいえ。解約ボタンを分かりにくくすると、お客様の不満が高まり、チャージバックや悪い評価につながります。地域によっては消費者保護のルールに違反することもあります。解約はかんたんにできるようにし、その機会を使って理由を知り、一時停止などの本当に役立つ代替案を提示しましょう。